Hキューブ§3


中学生事件の後のHキューブの姿は無残だった。
まるで壊れたレゴのよう。
美しかった四角形は崩壊し、
もはや、Hキューブは私に話しかけてこなかった。


その後も私はHキューブの前を何度も通った。
そして見かけた。
夜、サラリーマンが一人しゃがんでいる姿、
夕方、高校生数人がきょう声を上げ群がる姿。
朝、誰もいないが昨日よりさらに壊れてしまったHキューブの姿。
Hキューブが置かれてから一週間もすれば、
Hキューブは跡形もなく消えてしまっていた。
その場所は何事もなかったかのように、
元の通りキレイになっていた。
「数百冊もあったHな雑誌は全て消えてしまったのか…」
川を清掃するボランティアの方々が片付けたのか、
人々が持ち去ったのか、
それは分からなかった。
しかし、私は後者だと信じたい。
せめて、捨て主の宝物が後世に残ったと信じてやりたかったのだ。
うん、まぁね、捨て主の宝物を「リサイクル」して欲しかったのよ。
そうすれば、捨て主さんもHキューブも浮かばれんだろう?
私は「不健全」と呼ばれるも「人として健全な欲求」を、つまりは「煩悩」を信じたい。