視聴率貧乏神 15

現在、私が視聴率貧乏神である事実を知るモノはいない。
そして、私を「ビンちゃん」と呼ぶものもいない。
一人を除いては。
そう、エロ仙人だけが事実を知り、私を未だに「ビンちゃん」と呼ぶのである。
あの当時を思い出してみる。
「自分が学生だった時があったのかしら?」
そう疑ってしまうほどに時は流れた。
しかし、私達は相変わらず、未だにお互いを
「エロ仙人」「ビンちゃん」と呼び合う仲なのである。
彼の携帯には私の名前は「視聴率貧乏神」と登録してあるらしい。
こないだ、その事実を電話で告げられて
私は涙がチョチョ切れるほどに笑った。
「結婚するんじゃ、『エロ仙人』と呼ぶのは控えなきゃね」
こう言った私にエロ仙人は応えた。
「何を言う?『エロ仙人』の称号は俺の勲章だ。アノ当時、俺はピンクのお店に行くためにバイトに明け暮れた。その過去は俺の誇りであり、ヒストリーなんだぞ」
「しかし、奥さんの前でその名前を呼ぶわけにもイカンだろうさ」
「ふん、俺をみくびるなよ。ピンクなお店に入り浸った俺の女を見る目は確かだ。我がフィアンセは海よりも心が広い方なのだ。『エロ仙人』の称号も俺のヒストリーもひっくるめて、俺という存在の全てを受け入れてくれる尊い女性なのだ。俺が『エロ仙人』と呼ばれる由縁を彼女はモウ既に知っている、こないだ俺が話したからな」
「へー、彼女は『エロ仙人』だと知っててそんな男と結婚するのか。心が広いね」
「そうだ。彼女は俺にとっては『母なる海』なのだ。だから結婚するのだ」
「『母なる海』?じゃぁオマエはその海を泳ぐってわけか。まぁ、なんにせよ、おめでとう」
電話で話すエロ仙人は幸せそうで、私もなんだか幸せな気分になった。
電話を切った後、私は携帯の彼の名前の登録を「エロ仙人」に改めた。
そして、閃いた。
「この話し、ブログで公開したら、みなさんにエンターテイメントを提供出来るのではないか?」
私は思わずニヤニヤした。
そして、底抜けに阿呆で、可愛かった自分達の昔日を振り返った。