視聴率貧乏神 14

「車が正しい方向に進むためには両輪が必要だいうことさ」
エロ仙人はなかなか面白い例えをする。
東京で一人暮らしを始めたばかりの私はいい気になっていたに違いない。
私の鼻はピノキオばりにギュンギュン伸びていたことだろう。
洗濯モノが干せるほどに。
俺は自分を見失ってはいなかったか?
エロ仙人に諭されてヤット気付くとはナントみっともない男なのだ。
ああ、恥ずかしい。
スマン、エロ仙人。
スマン、皆。
スマン、テレビ。
私はエロ仙人の言う通り「ビンちゃん」の称号を受け入れることにした。
クラスメイトの可愛子ちゃんに「なんでビンちゃんなの?」と訊かれたら
胸を張って言い切ってやる!!!!
キングボンビーの略だからなのだ!!!」
みんな、私を「ビンちゃん」と呼んどくれ!!!
分かりやすいようにtシャツに「I'm視聴率貧乏神」と書いて街を歩いてはどうか?
・・・あー、それでは警察のご厄介になるな。
私はソレは断念した。


しかしながら、気付けば大学はいつの間にか夏休みだった。
一ヶ月程の休みの後、大学の連中と逢えば
誰も私を「ビンちゃん」と呼ばない。
みんな、その称号を忘れてしまっているようだ。
「なんだ、ソノ程度の称号だったのか」
称号を受け入れる気満々だった私は肩透かしを食らったようで何だか寂しかった。
私が考えているほどに、
回りは全く意識してなかったのである。
よく考えるまでもなく、当たり前だわな。
「自意識過剰」
私は教室で一人つぶやいた。