視聴率貧乏神 8

私は視聴率貧乏神の現実は受け入れたものの、
「ビンちゃん」の呼び名は受け入れたくなかった。
だって、カッコ悪いではないか?

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大学進学を機に伊勢の田舎からノコノコ東京に出てきた私。
東京での生活は何から何まで伊勢の生活とは違っていた。
イメージして欲しい。
草原の中、山羊や牛と戯れて星を見つめて暮らしてきた若造が
スカイスクレイパーなる大都会のコンクリートジャングルに放り込まれる様を。
ペーターがハイジと別れ、六本木ヒルズで一人暮らしをする様を。
随分誇張されているがアナガチ間違ってはいまい。
ペーターはきっと六本木ヒルズ夢遊病になって車に跳ねられるオチだろうが、
私はソウはならなかった。
きらびやかな都会に順応すべく戦ったのである。
私は「シティーボーイ」目指して奮闘努力した。
「シティボーイって何さ?」
・・・なんだかワカラン。
しかし、とにかく都会に順応したかったのである。
都会と言っても八王子だったが(笑)

「郷に入れば郷に従え」
私は「まずは言葉だな」と考えた。
コレは経験から言うのだが、
伊勢言葉で東京の人と話すと若干ニュアンスが相手に届かない。
伊勢言葉はモノを投げるようにして話すワイルドターキーな言語である。
誤解を恐れず言えば、伊勢言葉は乱暴なのである。
おしとやかな東京の紳士淑女には伊勢言葉は強烈過ぎるのだ。
必要のない所で相手に良からぬ印象を与えるのは得策ではない。
そして、伊勢出身の私にとって
聞きなれない標準語はなんだかスマートで
とってもオシャレに聞こえたのである。
私は標準語をマスターしようと試みた。