視聴率貧乏神 5


その日以来、私は「ビンちゃん」と呼ばれるようになった。
「ビンちゃん」はいつしか「キングボンビー」になり、
友人の中には、私を「キング」と呼ぶものもいた。
「なんでキングなの?」
クラスメイトの女の子の自然な質問に、
私はただ曖昧な笑みを顔に貼り付けたまま
黙りこくっているしかなかった。
私は平静を装い、ソウ呼ばれることに何気なく笑顔で応じてはいた。
しかし、この限りなくイジメに近い汚名で呼ばれることは耐え難い仕打ちのようで
私は連夜、一人で枕を塗らした。

「ヤツラを模したわら人形に五寸釘を打ち込んでくれるわ!!!!!」
さすがにそこまでメンドクサイことはしなかったが。


「ビンちゃん」という汚名を雪ぐべく私は論理的に考えた。
そもそも、本当に私が見る番組は視聴率が低いのか?
ここは一つ、ちゃんと自分と視聴率の関係というものを調べてみよう。
そして、きっちりヤツラに反証を上げてやろうではないか!!
私はパソコンに向かい、血眼になりデータを集めだした。
「目にモノみせてやろうぞ!!」
今思えば、このような不毛な努力に心血を注ぐことが出来たのは若さゆえであったに違いない。
「そんなことするぐらいなら『ビンちゃん』でいいじゃんよー」
現在の私なら、当時の私に、このようなマットウな言葉をかけるだろう。
しかし、当時の私にそのような言葉をかけてくれる人はいなかった。
私は「ビンちゃん」の汚名を振り払うべく、なりふり構わず全力で走り出した。
メラメラ燃えていたのである。
私は救いようのない阿呆だった。
ああ、可哀相な俺。