視聴率貧乏神 3

一瞬黒い怒りに駆られそうになった私だったが、
ソンナことで我を忘れるほど愚かではない。
間抜けな友人達と違って、私はジェントルマンなのだ。
私は、慎みを持つ男なのだ。
ここはコイツラの遥かな高みから、
ジェントルマンが持つと噂される『大人の余裕』というものを見せてやらねばならん。
君達と僕は違うのだよ。
考えられる限り自然な笑みを浮かべ、
芝居がかったオドケぶりを装おいながら、
私は再び自嘲気味に口を開いた。
「いやぁ、俺の興味は世間とズレてるからさ、視聴率の悪い番組にしか興味がナイんだって。ミンナが理解できないのも仕方がないんだよねぇ」
見ろ、コレが『大人の余裕』ってやつだ、愚かものどもめ。
訳知り顔で強がる私が最後までしゃべり終わるか否かのタイミングで、
一人の友人が片手を挙げ私の言葉を制し、そして、言った。
「そうだ。将棋は不人気かもしれないが、将棋が悪いわけではない。しかし、なぜ視聴率が上がらない?その原因があるだろう?俺はな、その原因はオマエだと思う。諸悪の根元はオマエなのだ」
何を言う?
「教えてやろう。オマエは『視聴率の悪い番組にしか興味がナイ』のではない。それは間違いだ」
怪訝な顔をしている私を尻目に友人は続けた。
「ハッキリ言ってやる。なぜ『将棋の時間』が人気が出ないか?それは番組が面白くないからではない。不人気の原因は『オマエが見ているから』だ。オマエは幼少の頃から視聴率の低い番組ばかり見てきたのではない。オマエは幼少の頃から、画面を通して番組に呪いをかけていたのだ。分かるかい?この意味が?つまり、オマエが見るから番組の視聴率が上がらないんだよ。オマエに選ばれし番組は全て例外なく呪われてしまうのさ。オマエは視聴率の貧乏神なのだ!!!!!」
何をバカなことを言う?
私が視聴率を下げているだと?
何を非科学的な・・・
しかし、友人達はその言葉にヤンヤやんやの喝采を送った。
「何度でも言ってやる!!!!オマエは『視聴率貧乏神』なんだ!!!!!」
ナーニー?!!!???!?!?!?!
私が貧乏神だと?!?!?!?!!??
思わず「ぎょえええ」と叫んでしまいそうになったが、
奥歯を噛み締めなんとか耐えた。