視聴率貧乏神

その者は視聴率貧乏神のようなものである
その者は視聴率貧乏神である
それ故に追放された者である

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私が見るテレビ番組は人気がない。
なぜか人気がない。
みんな見ない。
幼少の頃からそうだった。
小さな私が、夕方、テレビを見てたらロボット戦隊ものがやっていた。
「なんてオモシロイ番組!!!!!」
興奮してテレビに噛り付き隅から隅まで番組を楽しんだ。
確か「宇宙刑事ギャバン」と言ったかな?
「俺が宇宙刑事だー!!地球を救うぞー!!」って勢い。
ワクワクしてルンルンな気分で床に着いた。
この興奮を共有したい。
次の日「♪若さ、若さって何だ♪」と歌いながら学校に行き、
教室に入るなり友人達の前でその番組の話をした。
しかし、その番組を見ていた者は誰一人としていない。
話が盛り上がるワケがない。
肩透かしをくらった私はガッカリして口をつぐんでしまう。
期待が大きかった分、失望感も大きい。
小さな私は大きな失意を抱えながら、学校から一人トボトボ帰ったのを覚えてる。
可哀想な俺。

しかし、そんなことはザラだった。
私の見る番組を、ことごとく友人達は見ていなかった。
そして、友人達が見る番組を、ことごとく私は見ていなかった。
つまり、友人達と私が見ている番組が違うのである。
友人達が楽しそうに交わすテレビ番組の話の輪の中に入っていけない。
会話の輪の中に入りたいのに入っていけない。
小さな私は、タダ、タダ、曖昧な笑みを口元に浮かべ、友人達の話しを聞いていた。
ああ、ますます可愛そうな俺。


次第に、私は友人達の前でテレビ番組の話をしなくなった。
感動が共有出来ないことほど、寂しく、そして、腹立たしいことはない。
「オマエの興味は世間と少しずれているのさ。でも、それで良いんだよ。わが道をいきなさい」
私は自分に対し、限りなく慰めにちかい心のエールを贈った。

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大きくなった私は、酒宴でそんな思い出話を友人達の前で披露した。
「俺の興味は世間と少しずれてるのさ」
自嘲気味につぶやいた私に友人は訊いた。
「おい、大きくなったオマエが見るテレビ番組は何だ?」
私は胸をポンと叩き、即答した
「『将棋の時間』。毎週録画して見てるよ。面白いよねーアレ♪」
友人達は一瞬ポカンとした後ドッと笑った。
・・・なぜ笑う?
ひとしきり笑った後、友人の一人が真顔で言った。
「大丈夫、オマエは世間とずれていないよ。オマエはね、世間とは異次元の世界の住人だ」