ぬこ


都内を歩いていれば、
車がごうごう行き交う歩道の脇、
老ニャンコが一匹佇んでいた。
この老ニャンコ、全く動かない。
ゴロリと寝転んで固まったまま。
歩道は昼間から人通りが多く、
ニャンコの1m脇には人がヒッキリナシに行き交う。
しかし、老ニャンコは微動だにしない。
そういや、毛並みも妙に艶がない。
まるで石膏で出来たかのよう。
「置物なんじゃナイか?」
実際、そう疑ってしまう程だった。
しげしげと眺めれば瞬きをしている。
「ああ、生きている」
忙しく行き交う人びとの喧騒どこ吹く風。
老ニャンコは泰然自若なのである。
「悟りをひらいてんじゃないか?」
歩道を何の気なしに眺めるニャンコは
まるで「仙人」のよう。
今にも人語を操りそうな雰囲気だ。
「仙人」でなくては「妖怪」かもしれない。
それほどタダならぬオーラを身にまとっておりました。
弟子にしてもらいたいくらいだ。
触らしてもらおうかと思ったが、
仙人の体をムヤミやたらに触るのは慎みに欠ける。
黙って写真だけ撮らせてもらおうとしたら、
大きなアクビを一発。
おー、グッドなニャンコ。
「師匠」と名付けてしまいました。