続・続・ミラクル


車で病院へ向かう途中も眼の中の異物は「これでもか」と俺を苦しみ続ける。
そして、病院に向かう道中は、まさかの渋滞。
gwの渋滞に巻き込まれるという爆笑クラスのおまけ付き。
まさか病院まで1時間以上かかるとは。
「泣きっ面にハチ」
これを「ミラクル」と呼ばずになんと呼ぶ?
「カルマだ」なんて言わせない。
進まない車の中、助手席でハラハラ涙を流し続け、
身悶える弟を尻目に、兄貴はメールを打ち続けていた。
後で聞いた話だと兄貴のメールの宛先は義姉さんだった。
「マダ『ぎゃーぎゃー』わめいとる」
彼は、このような趣旨の文章をつづっていたらしい。
車の中から弟の悲惨な状況を随時実家に実況中継していたそうな。
全くもって弟想いな兄貴だな。


車の中で苦しみ続けた俺。
しかし、病院に着けばあっという間。
眼の中の異物をキレイに取り除いて頂き、
先ほどまでの痛みがまるで嘘のようにスッキリ。
・・・一体あの痛みは、なんだったのだ?
先生は言う。
「いやぁ、角膜がひどく傷ついているね。二三日は痛みは引かんでしょう。目薬出しとくからさ。お大事に」


診察が終わった後、待合室の長椅子に腰掛ける俺は声をかけられた。
「あのー、どうして接着剤が眼に入ったんですか?」
ふと顔を見上げれば、そこには看護士のオネーさん。
・・・オネーさん、可愛い・・・そのナース服、コスプレにしか見えません。
このミラクルを君に伝えたい。
そして、あわよくば君の携帯番号・・・ゲフン、ゲフン。
あまり真剣にしゃべり続けるのもみっともない。
オネーさん、僕は君の前ではジェントルマンを気取りたい。


・・・しかしね、結局、ごく普通に話をしてしまいました。
事の顛末をメモして、
オネーさんは「お大事にどうぞ」と決まり文句を言ってその場を離れて行った。
去り行くオネーさんの後姿を横目に
「ナース服は三割増しですね。」
俺が心の中でソウつぶやいたのは言うまでもない。