なんちゃって写真講座

三杯目のビールを飲みながら先生は言う。
「そうそう、これだけは始めに言っておかなければいけない。」
「オマエね、写真を過信してはいけないよ」
−?
「『写真に写ったものが全て現実と思っちゃいけない』ってことなのさ。写真を盲目的に信じるとトンでもなく痛い目に会うんだぜ。」
−抽象的過ぎるよ。もっと具体的に話してよ。
「そうだなぁ。うーん。写真じゃなくて動画の話になるけどさ。北京五輪の開会式でさぁ、足の形した花火あったろ?アレ、CGだったじゃんね。モウ本物そっくりでさ、『こりゃダマした方が見事』って俺は笑っちゃったけどね。あの時『五輪でCGの嘘』『やらせ花火』って各国から批判があったのも事実だわな。」

「でも俺はメディアに教えてもらうまでアレがCGだなんて全く気付かない。メディアに教えてもらわなければ、俺は今でもあの花火をきっと本物だと思い込んでるに違いない。俺のように『騙されるワケない』と過信してるヤツに限って、目にしたことを疑えない。」


「写真やるならアレと同じことが写真でも起こるってことを知っておかなくていけない」
PHOTOSHOPってオマエも知ってるだろう?写真を合成できるソフト。あのようなモノを使えばどんな写真だってあっという間に作り上げることが出来るんだわ。」
「例えば、どっかの大統領が腹の贅肉を削る合成を行ってたろ?アレくらいカワイイもんだけどね。その気になれば、しみ、そばかす、しわなんてあっという間に消えてしまう。」

「例えば、ピザの広告写真。アツアツのピザはチーズがトローリ美味しそう。アレも嘘。あのチーズのトローリは合成してある。トローリは3割くらい水増しさ。」
「誤解を恐れずに言えばだな、今の世の中、むしろ修正してない写真はナイと思っても間違いないと思うのさ。」

「ここで確認。間違えないで欲しいのは『修正することが悪』ってことじゃぁナイ。俺はタダ『写真も絵と同じでいくらでも修正できる』ってことを認識しておくべきだと言っているのさ。この二つは似てるようで全然違う。『価値判断』と『事実』だからね。全く違うものなのさ。」
「『写真を過信してはいけない』ってのはそういうことなんだよ。伝わったかしら?」
−うん。なんとなく理解した。
三杯目のビールを飲み干してから先生は笑ってコウ付け加えた。
「まぁ、過信するほど、俺もオマエも若くはないだろうけどね」