ミラクル

gwの伊勢への滞在中に事件は起きた。
加害者であるカーちゃんを恨んではいない。
むしろ被害者が俺で良かったとさえ思ってる。
だって兄貴の子供に被害が及ばなかったのだから。
普通に考えれば、被害者は俺が適任だったであろう。

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チビちゃん達とオモチャで遊んでいたら、そのオモチャが壊れた。
部品が外れた。
「くっ付けりゃぁスグ直る。瞬間接着剤を使おう。」
新品の瞬間接着剤のキャップを開けてみれば、
中身が外気と触れないように薄いアルミ膜が張ってある。

普通はキャップに突起物が付いていて
アルミ膜を破れるようになっている。
しかし、100円均一で買った安物の瞬間接着剤のキャップには
突起物は付いていなかった。
台所に立つカーちゃんに聞こえるように怒鳴る俺。
怒鳴り返すカーちゃん。


俺「アカン。アルミの膜が破れーへんわ。」
母「キャップの山で開けるんやって。」
俺「いやぁ、そのキャップがツルツルなんや。」
母「よー見てみぃ。キャップに山があるやろ?」
俺「ない。」
母「ホンマやろなぁ?」
俺「ない。」
母「ホンマやろなぁ?」
俺「ない。見てみぃや。」
母「そこまで言うなら、私がアンタの目の前で開けたるわ。」


瞬間接着剤を机の上に放り投げ再びチビちゃん達と戯れる俺。
怒鳴りあった後、
カーちゃんは机の上の接着剤をマジマジと眺め、どこからか針を持って現れた。
『アンタの目の前で開けたるわ』
カーちゃんはその言葉を実行すべく
チビちゃんと戯れる俺の目の前にイキナリ手を伸ばし、
その尖った針をアルミ膜に突き立てた。
全く突然のことであり身構える間もなく不意を付かれた俺。
力強く針を突き立てられた接着剤から
まるで破裂したように勢い良く中身が飛び出す。
そこでミラクル。
なんと!!!!!!
接着剤が俺の眼に飛び込んだのだ。
眼球にドロっとしたものが付着する感触をシッカリと覚えている。
これを「ミラクル」と呼ばずに、なんと呼ぶ?
脳天を突き刺すような激痛。
「母よ、呪われてしまえ」
俺が心の中でソウつぶやいたのは言うまでもない。